Tweet パートと派遣社員、正社員の違いって?法律や働き方の違いを解説します 仕事を変えたいと思ったとき、企業や業種、職種を選ぶ前に「労働形態」から見直す人もいると思います。 労働形態には大きく分けて「パート」、「派遣社員」、「正社員」の3つがあります。どれも馴染み深い言葉ですが、それぞれの働き方に明確な違いがあり、転職時にはそれらを理解しておけば、自分が一番働きやすい環境を見つけやすくなります。 そこで今回、それぞれの働き方や法律的な立場の違い、メリット、デメリットなどについて説明します。 1.法律的な違い まず、知っているようであまり知られていない、日本の法律におけるパート、派遣社員、正社員の違いについて解説します。 パート パートは「パートタイム労働法」において、アルバイトと同じ「パートタイム労働者(短時間労働者)」と定義されています。 パートタイム労働者とは、一週間内の所定労働時間が同一事業所における正社員よりも短い労働者のことです。 一方で「労働基準法」においては、パートは、正社員、契約社員、アルバイトと同じ「労働者」と定義され、雇用形態の区別はありません。 従って、正社員と同じ規定が適用されるため、例えば労働日数や時間などの基準が満たされていれば、有給休暇なども取得できます。 派遣社員 派遣社員も、労働基準法が定める労働者に該当しますが、派遣元である人材派遣会社と雇用契約を結んだ労働者となります。 そのため、雇用関係のある人材派遣会社が、給与の支払いや福利厚生、勤怠管理などを担当します。 派遣先の会社は、あくまで派遣社員に対して、業務の指揮、命令をする立場になります。 正社員 正社員とは、会社に直接雇用され、会社の規定に従って働く労働者のことです。雇用期間に定めがなく、「正規社員」とも呼ばれます。 雇用側は、正社員として雇った人を終身雇用することが多く、日本では定年まで雇用されるのが一般的です。 ただし、終身雇用は法律や規則で定められているわけではありません。あくまで日本の働き方における文化や慣習の一つになります。 また、雇用者側には会社の定める業務規則や業務命令に従う責務が発生します。 2.雇う側にとっての違い 雇用する側から見た、パート、派遣社員、正社員の違いについて紹介します。 パート パートタイマーを雇用するメリットとして挙げられるのが、急な労働時間の変更や人数変更といった労働力の調整がしやすい点です。 また、給与が正社員や派遣社員と比べ、安価という点もメリットの1つです。 その反面、大きなデメリットもあります。業務経験やスキルが豊富なベテラン社員を確保することが難しいため、技術や知識、ノウハウなどを社内で蓄積しづらい傾向があるのです。 そのため、長期に及ぶ戦力の確保は難しいといえます。 さらに、昇進や昇格などがないことから、会社に対する忠誠心や仕事に対する責任感が生まれにくいという点もデメリットの1つです。 企業がパートを雇用するシーンとしては、安価な労働力が欲しいときや繁忙期などに合わせ一時的に労働力を増やしたいときなどが多いでしょう。 繁忙期が終わったら雇用を修了できるという点は、労働コストの調整という点において非常に魅力的です。 パートタイマーは、景気の変動に合わせた労働力の調整を安価に行なえるため、収益の安定化には欠かせないものとなっています。 ただし、任せられる仕事は比較的簡単な仕事が多くなっています。 派遣社員 派遣社員を雇うメリットは、限定した期間だけ必要なスキルを持った人材を雇用できるという点です。 スキルレベルに関しては正社員以上のスタッフも存在するため、優れたスタッフを必要な期間だけ集めることが出来れば、突発的なプロジェクトなどには非常に重宝します。 また、スキルレベルによっては給与が非常に高いスタッフも存在しますが、長期的に見れば正社員より安価に済む場合がほとんどです。 一方で、労働力の安定確保が困難という点がデメリットに挙げられます。 期間限定の雇用となるため、企業側が継続して雇用したい意志があっても、継続できない場合もあります。 さらに、期間限定という労働形態から、企業に対しての忠誠心は生まれづらいというデメリットもあります。より好待遇の案件や、面白そうな案件に人材が流れがちになります。 企業が契約社員を雇用するシーンとしては、事業の安定化のため労働コストのコントロールをしたいときや短期間で結果を出さなくてはならない新規プロジェクトのリソースが必要なとき、ベンチャーなど先行きが見えない事業を行なうような場合のスタッフとして参画するケースなどが挙げられます。 適切なスキルを持つプロを期間限定で雇うことで、確実な結果を出しつつ、コストも抑えたいという場合に適しています。 正社員 正社員を雇用するメリットは、終身雇用であるため、社員の会社に対する忠誠心や仕事に対する責任感が生まれやすい点が挙げられます。 長期間にわたって従業員が働くことで、経験や技術の蓄積と継承も行ないやすく、長期的に安定した経営が可能となります。 また、正社員を多く雇用することで、社会的信頼が得られるというメリットもあります。 一方、正社員を雇用するデメリットとしては、解雇が難しい点と、人件費が高くなる点です。 日本は、正社員の解雇条件が厳しいため、一度正社員として雇用してしまうと、たとえ能力が低い社員であっても、容易に解雇することはできません。 さらに、正社員を雇用するためには、毎月の給与以外に賞与や社会保険料や交通費、福利厚生といった費用負担も発生します。 正社員が会社を辞める際には退職金も支払いますが、早期退職や会社都合の退職の場合は、退職金を割り増しにする必要があるなど、雇用する側の負担はパートや契約社員と比べると大きいといえます。 企業側が正社員を雇うのは、長期的な視点で事業を推進したり、会社を大きくする際に、信頼できる従業員に責任のある仕事を任せたいという目的があります。 安定した事業の推進を行なうためには、正社員は重要な存在なのです。 3.働く側にとっての違い 実際に働く人にとって、パート、派遣正社員、正社員は、それぞれどのようなメリット、デメリットがあるのか確認しておきましょう。 パート パートとして働く際のメリットは、自分の都合で働く日程や時間帯を選べることでしょう。 例えば、育児を行なう主婦や学生などにとっては、仕事とプライベートのバランスが取りやすく、働きやすい環境といえます。 また、求人の数や種類も多いため、自分の得意な分野の仕事を選びやすいという点もポイントです。 職場によっては、ダブルワークを認めているところもあるため、曜日や時間を調整することで効率のよい働き方をすることもできます。 また、与えられる業務の責任が軽いということもあり、辞めやすいという点もメリットの1つです。 一方、デメリットとしては、正社員と比較して給与が安い傾向にあるという点が挙げられます。 交通費に関しては支払われる場合が多いのですが、昇給や賞与は正社員と比較すると限定的で、各種手当や福利厚生を受けられる職場が少ないのも現状です。 さらに、シフト制の勤務の場合、働きたいときに確実に仕事を入れられないケースもあるなど、収入が不安定になりがちです。 また、与えられる仕事も限定されるため、責任のある仕事につきにくく、やりがいを感じにくい面もあります。 派遣社員 派遣社員として働くメリットは、自分のライフスタイルや希望に合わせて好きな仕事ができる点です。 登録した派遣会社から、働きたい勤務地や時間、自分のスキルに応じた仕事を紹介してもらえるため、希望する仕事内容とのズレも少なくなります。 また、もし派遣先の職場環境や仕事が合わない場合は、契約期間が終了すれば他の仕事に変更してもらうことも可能です。 このように、さまざまな職種にチャレンジしながら、ご自分に合った仕事を探せる点も派遣社員のメリットといえます。 大手新聞社や出版社の編集職など、正社員ではなかなか募集のない企業、職種であっても遣社員であれば働ける確率も高くなる傾向があります。また、その職場で実績を挙げることが出来れば、直接雇用されるというチャンスもあります。 さらに、派遣先でトラブルが発生した際には、派遣会社が会社と調整してくれるため、自分一人で問題を抱え込んだり、不安な思いをしたりする必要もありません。 派遣社員のデメリットは、正社員と比較すると年収が低くなる場合が多いという点でしょう。 月額でもらえる給料に関しては正社員より多い場合もありますが、派遣会社の多くは交通費の支給がない、賞与がもらえないケースを考えると、総合的に見ると正社員の方が高い年収となる場合が多いのです。 また、期間限定の雇用である点から、社会的信用が正社員よりも低く見られるという点も大きなデメリットです。 さらに、スキルにもよりますが、重要で責任のある仕事につきづらいため、仕事にやりがいを感じられない場合もあります。 正社員 正社員として働くメリットは、まず長期間働けるという点が挙げられます。 日本の企業の多くは終身雇用を前提に正社員を雇用するため、一度入社すれば定年まで働けるという安定感があります。 昇給や昇格の機会も年に数回ある会社や、勤続年数に応じて役職や給与が上がる年功序列制の会社もあるため、長期間勤められるというメリットは大きいといえます。 また、賞与が満額支給されるという点も、契約社員などにはないメリットでしょう。 さらに、通勤手当や住宅手当といった各種手当に加え、社会保険や福利厚生、必要なスキルを習得するための研修に参加できるといった点も魅力的です。 しかし、正社員にもデメリットはあります。 手厚い待遇の見返りとして業務命令には従う必要があるため、急な部署異動や転勤があった場合は原則として従う必要があります。 与えられる仕事も重要なものが多くなるため、それに対する責任も重くなるケースもあります。 業務命令と同じく、会社の業務規則にも原則として従う必要があります。例えば、副業禁止などのルールを徹底している企業が多いことも覚えておく必要があります。 加えて、最近は国内トップクラスだった某家電メーカーが経営に行き詰まり、大量に希望退職者を募るなど、正社員だからといって昔ほど手放しで安心していられる環境ではなくなっています。 4.実例を紹介 次に、実際に転職する際、何を重視して決めたのか、それぞれのケース別に見てみることにしましょう。 パート パートで働くメリットは前述したように、自分の都合で曜日や時間帯を選べることです。 そのため、学業がメインである学生や育児中の主婦、サラリーマンの副業などに適しているといえます。 また、俳優やアーティストなど働きながら自分の夢を叶えたいという人が、パートを選択するケースが多いです。 派遣社員 派遣社員として働く場合、会社によっては勤務時間や勤務地が選べるだけでなく、自分の持つスキルを存分に活かして働くことが可能になります。 そのため、育児や家事、趣味といったプライベートと趣味を両立させたい場合に適しているといえます。 また、プログラマなどの場合は、自分が興味のある案件や企業の仕事を受けながらステップアップできるという点も大きなメリットといえます。 将来的に特定のスキルを伸ばしたいという人も、取得したいスキルを伸ばせそうな職場を紹介してもらえることもあります。 正社員 正社員として働くメリットは、色々な面での安定感です。 給与だけでなく、社会保険や雇用保険が充実している点や、社会的信用が高いという点があるため、結婚して家庭を持ちたい人などは、正社員になりたいという人がほとんどでしょう。 特に男性の場合、結婚する際に、相手方の両親からの信頼度も正社員の方が高いため印象も良くなりますし、マイホームを購入する際のローンを組む場合も、正社員の方が有利となります。 5.転職時の違い 最後に、それぞれの転職スケジュールなどの違いについて解説します。 パート パートの求人は、基本的に年間を通してありますが、比較的案件数が多くなるのが3月です。 3月は、転勤、卒園、入園、入学、卒業といったイベントが多く、生活環境が大きく変化するタイミングであるため、それまで働いていた職場を辞める人が増える傾向にあります。 そのため、必然的に穴埋めのためにスタッフを募集する企業が増えるというわけです。 案件数が増えるため、仕事の選択肢も増えるので狙い目といえます。 しかし、応募者も多くなるため、競争率が上る点も忘れないようにしたいところです。 そのため、最低でも1ヶ月以上前には、働きたい職種や企業のリサーチや、自己アピールポイントの棚卸しをしておくと安心です。 派遣社員 派遣社員は期間限定の仕事であるため、契約が終了する以前から次の仕事探しをする必要があります。 そのため、空白期間を作らないために契約満了日の1ヶ月以上前から、次の仕事を探し始めるのが一般的です。 その際、所属する派遣会社からいくつかの仕事を紹介してもらえることもありますが、別の派遣会社に登録して選択肢を増やすことで、継続的に仕事を続けられる確率を上げておくと安心でしょう。 求人サイトなども併用できれば、さらに確実といえます。 正社員 正社員の中途採用の求人が多い時期は、3月と9月です。 期の切り替えタイミングに合わせて退職する人も多いため、必然的にこの時期に求人が増える傾向あります。 また、6月も比較的募集が多い月といえます。 職種によっては随時募集をかけている企業もありますが、正社員を目指したい場合は、これらの時期をターゲットに希望する職種や企業のリサーチや、必要なスキルの習得など済ませておく必要があります。 ただし、正社員を目指す人は非常に多いため、人気の企業や職種では熾烈な戦いとなることも多いのが実情です。 そのため、競争に勝ち抜くためには、転職エージェントなどを活用するのも一つの方法といえます。 6.まとめ 雇用形態の違いによる、メリットやデメリットについて理解いただけたでしょう。重要なのは自分がどのような目的で働きたいかという点です。 そのためにも、今後どうしたいかを明確にして、雇用形態から条件を決めて探していきましょう。